(この記事は2016年に書いたものです。ブログ記事の整理移転により、こちらに転記します)
昨年の秋、憧れのタルマーリーへ行ってきました。
ここは、私の愛読書である『田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」』の著者である、渡邉格(わたなべ いたる)さんのお店。いつか訪れたいと、ずっと思っていたお店。
出雲でランチミーティングがあったので、これは良い機会だと思って鳥取&島根へ初上陸です。
タルマーリービギナー丸出しで、いざ!
で、まさかまさかのザーザー降りの雨。
乗り換えの智頭駅で駅員さんに、傘を売っているところはないですか?
と聞いたのですが「ないです」とのこと(涙)
仕方なくずぶ濡れを覚悟で、荷物をガラガラ引きずっていこうと思っていて、タルマーリーの最寄駅の那岐駅に着いたら、あんなに降っていた雨が小雨になるという奇跡が!ラッキー!
足元が悪いにもかかわらずルンルンな足取りで行き着いたタルマーリーは、雨にもかかわらず店内は満員。
さすがだなー、と思いながらしばらく待つことを覚悟していたのですが、私は一人だったのでそれほど待たずにカウンターに座ることができました。
私ったらキョロキョロして「タルマーリービギナー」丸出し(笑)
だって、だって、遠くからやっとやってきたんだもの、キョロついてしまいます・・・笑。
私は、ピタサンドを注文しました。
うまっ♪
野菜がシャキシャキしていて、オーロラソースとの相性も絶妙。
あと3つくらい食べれちゃいそうな勢いで、あっという間に完食。
渡邉格さんにサインをもらう
お腹も満たされてふぅ〜っと見回すと、イタルさんがフラ〜っと私の後ろを通りました。
今だ!
「イタルさん!サインもらっていいですか?」
イタルさん
「いいですよ〜、ちょっとペン持ってきますね〜」
と、ソフトなお声にソフトな笑顔、ソフトなお人柄でした。
サインをもらいながら、私の息子のアレルギーの話も聞いてもらいました。
イタルさんは、
「こんな世の中なのだから、アレルギーがあるのが普通なんですよ。アレルギーがない人の方が普通じゃない。」
そんなお話をしてくださいました。
どこの家庭にでもある風景が心にしみる
今回、初のタルマーリー訪問ですが、実は私の中に深く入り込んできた感動は、パンの美味しさと店内の居心地の良さだけではありませんでした。
それは、私がゆったりと一人で座り、カウンターの向こう側の様子を眺めながら美味しくいただいているときでした。
女将のマリさん(イタルさんの奥さま)が私の斜め前で洗い物をしていました。
そこへ娘ちゃんのモコちゃん(だと思います)がやってきて、一生懸命、マリさんに話しかけていました。(娘ちゃんはモコちゃん、息子くんはヒカルくん。これは、渡邉格さんの『田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」』
の中に書かれています。)
マリさんは洗い物の手を休めることなく、洗いながらモコちゃんとお話ししています。
やっぱり女の子、モコちゃんは今日の出来事を一生懸命報告している様子です。
それは、普通の家庭で話す、普通の会話の、普通の光景でした。
しばらくすると、今度は息子くんのヒカルくんがやってきて、「今日はいきたくない〜」と何かをマリさんにアピールしていました。
店内に子供がいて、働く大人とおしゃべりしている様子になんの違和感も感じませんでした。
むしろ自然でした。
私の父は、会社を経営していました。
自宅から近くの父の会社へ、私も小さい頃によく遊びにいっていました。
(邪魔をしに行っていた、といってもいいかもしれません)
私も従業員さんに話しかけたり、番犬として飼っていたシェパードと遊んだり。
従業員さんの書いたラブレターらしきものを、うっかり見つけてしまったり(笑)
12月30日は社員の人たちとみんなで大掃除をした後に、お寿司を食べたり。
今、私が思い出す父の働く姿は、とても生き生きしていました。
洗い物をしたり、忙しく店内を行き来するマリさんの姿も、きっと、モコちゃんとヒカルくんの目にはキラキラして映っているのだろうな・・・。
そんなことを感じました。
仕事をする姿を子どもに見せるということ
「そうだ、私もこうあるべきだ。」
私が楽しそうに仕事と家庭を両立できれば、「仕事をするって、こんなにイキイキできて素敵なことなんだ!」と子供たちにみせてあげることができる。
「ちょっと待って〜、今、仕事中だから〜」と忙しい空気を出すのではなく、「社会とつながって人のためになることは、こんなにすばらしいことなんだよ。」って子供たちにみせるべきなのです。
親の働く姿を見せることができるのは、幸せなことなのかもしれません。
私は小さい頃から、当たり前に大人の働く姿を見てきましたが、それは、とても恵まれていたに違いありません。
そして、誇りをもって自分の仕事を愛していた父。
父の会社の経理を一手に引き受けて、陰で支えてきた母。
私は今頃になって、その尊い時間を父と母と過ごせたのを感謝せずにはいられないのです。
誰かのためになることをし、そして、つながりたい。
私自身のやるべきことが、ますますクリアに見えてきた出来事でした。