人工知能(AI)の開発に携わったのち、脳の視点から感性分析をし、ヒット書籍もたくさんの黒川伊保子先生の本です。
『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』などの、トリセツシリーズが有名ですね。
私は、伊保子先生のエッセイの軽快なリズムなのに力強い文脈が大好きで、いつも最後まで一気に読んでしまいます。
4年ほど前には、セミナーにも参加しました。
お話もとても面白いんです。
特にこの本『英雄の書』は、私にとって印象深いエピソードがあります。
温かかった手

セミナーの後、本にサインをもらうために伊保子先生に声をかけさせていただいた時、私は言いました。
「私はライターなのですが、ライター業界は男性が多く女性の声が通りにくいです。異業種でも、私と同じような思いをしながら働く女性がたくさんいます。いつか私のブログの読者さんを集めて、伊保子先生をお呼びしてお話会を開きたいです。」
先生は深くうんうんと頷いた後、「待ってる!がんばって!」と手を握ってくれました。
あの時、空を突き抜けそうにまで体の中を真っ直ぐに走っていった「よーし!」というエネルギー。
いま、あの熱いエネルギーがあるかといわれると正直自信がないけれど、また取り戻せるんじゃないかという期待は実はあります。
隣に座った女性

もうひとつエピソードがあります。
伊保子先生のセミナーで、隣に座った女性とのやりとりです。
彼女は、私よりひと回りくらい年上の女性でした。
自営業の旦那さんの仕事を、一緒に手伝っていると話してくれました。
そして、伊保子先生の『成熟脳』という書籍を机の右隅に置いて、この本にパワーをもらったのだと語ってくれました。
何度も読んだのであろうその本は、角が折れ、気持ちのいい丸みを帯びた「読み込んだ本」という感じでした。
セミナーが終わり私が先生のサインをもらって帰る仕度をしていると、「サインをもらってきたのですか?」とその女性が私に聞きました。
私は「まだ間に合いますよ。行ってきた方がいいですよ!」と、ちょっとモジモジしている彼女の手を引いて、先生とお話をしたい人たちが並ぶ列の最後尾へ彼女を連れていきました。
(後で思い出すと、なんて強引でお節介な自分なんだと思ったのですが、結果的に彼女が喜んでくれたので良しとします、笑)
何度も読んでクタクタになった『成熟脳』の本にサインをもらって、彼女が戻ってきました。
(私はなんとなく気になって、「ペットボトルのお茶を飲み終えてから帰ろうっと」みたいな素振りで彼女を待っていました、笑)
戻ってきた彼女がこう言いました。
「私は2年前にこの本に救われた。そして、今日、あなたに救われた。ありがとう。後悔しなくてすみました。」
宮崎駿の描く青空みたいな笑顔の彼女を見て、私もいいことした感であふれて会場を後にしました。
熱はまだ覚めていない

『英雄の書』の表紙を見るたびに思います。
伊保子先生に手を握られて、あのとき本気で「がんばろう」と思った自分。
隣に座った女性の私へ向けられた「あなたに救われた。ありがとう」
いま思い返しても、あの時の体が温まった感覚をはっきり覚えています。
心が温かい感覚、まだ私にも残ってるんだな。
がんばらなきゃ。