ワタシリズムに気づく ー 心と文脈 ー

読書室

【アライバル】ことばのない静寂な世界ほど、こころは正しさであふれる

読書は、どんな感想や感情を抱こうが正解はないです。
(読書だけに限らず、絵画や音楽もそう)
感じたそれが、読み手にとっての正しさになります。

絵本『アライバル』は、特にそれが色濃く得られます。

文字がなく、すべてイラストだけで構成されるそれぞれのページからは、こころの様子や風景や状況を察することができますが、文字がないことで、さらに自分の中に湧いてくる感覚に集中できるからでしょうか。
読者の、絵をみる目や置かれている環境に委ねられるのだと思います。

極端にいえば「読む瞬間ごと」で感想が変わる、そんな絵本です。

ショーン・タンのアライバル(ざっくりおおすじ)


– The Arrival by Shaun Tan

主人公が家族と離れ、新境地で暮らさなくてはならなくなった移民のお話です。

文字も言葉も通じない、法律も常識も分からないことだらけの国で、人のあたたかさや心の拠り所をみつけ生きていく…、そんな物語。

著者のショーン・タンの父親は、マレーシアに移民した両親の間に生まれた中国人。
母親は、アイルランド人とイギリス人を先祖に持つオーストラリア人。
ショーン・タンはそんな環境から、いままでも帰属意識を常に持ち続けてきたそうです。

祖国を離れること、家族と離れなければならない事情など、物語の主人公の冷たい孤独感が繊細な絵からジリジリ伝わってくるのは、ショーン・タンの周囲が感じるさまざまな文化や国籍の、混沌の形なのかもしれませんね。


– The Arrival by Shaun Tan

 

《読めばわかる》心の置き方に変化が出る

物語全体を通して、こんなことを感じました。

「自分を貫くのではなく変化に対応し馴染んでいく、という生きかた」
「遠くつながる家族を想い、新境地で自分を保ちながら順応していく生きかた」

これは、自分をなくすこととは違います。
我慢して周りのいうことを聞かなければならない、というわけでもありません。

自身を取り囲む環境に「対応」するのは、すでに自分で考えているからです。
自分というフィルターを通して判断し、自分を適応させているのです。

「貫くではなく順応」
これは、新しい(不慣れな)場に自分が置かれたときの、低刺激で最短な対処法なのです。


– The Arrival by Shaun Tan

実はこれは、人生そのものなのでは?
ここに気づくと、この本を読む視点が一気に変わります。

苦難にどう対処しよう、その場をどう乗り越えよう。
『アライバル』は、そんな判断をする際の “ 感覚的な ”手引きとなるでしょう。

 

読者の新境地アライバルへ

本を開くとそこは文字のない世界が置かれ、文字がないからこそ、こころがリーチできる範囲がひろがります。

気づきもたくさんあります。

自分が窮地におちた時の受け入れかた、そして次につなげる行動こそが、その瞬間の正解です。
きちんと自分で考え、消化し、受理できれば、選んだ方向はすべて「正しい」なのです。

ふと、どこかで見たこんな言葉を思い出しました。

「どちらを選ぶかが重要なのではなく、選んだ方をどう正解にしていくかが大事」

 

『アライバル』という移民の物語は、不自由な世界に放り出された中にひろがる、無限に自由なこころと可能性を描いた絵本でした。

『アライバル』(ショーン・タン著)
 

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