
宮沢賢治の作品で『春と修羅』というものがあります。
その「序」のなかに
これらは二十二箇月の
過去とかんずる方角から
紙と鉱質インクをつらね
(すべてわたくしと明滅し
みんなが同時に感ずるもの)
ここまでたもちつゞけられた
かげとひかりのひとくさりづつ
そのとほりの心象スケツチです
と記された部分があります。
宮沢賢治のいう「心象スケッチ」とは、単に自分の心情を綴るという意味ではないそうです。
心象とは、宇宙や時間などのような普遍的なものと人間をつなげるスケッチだと賢治は捉えていました。
私たちは、急速に流れ行く時間の波にやや溺れながら、時を消化しがちです。
まるで「忙しい」という言葉に溶かされてしまうように。
この一瞬一瞬にもきちんと息吹が吹き込まれているのだ、ということを自覚するだけでも、私たちの日常の色彩は変わると思います。
賢治の文才には到底およばないけれど、自分の中に広がるイメージを頼りに、私は私のなかで生まれる心象を、流されず、飛ばされないように、しっかりと書きとめておきたいと思うのです。
ー『春と修羅』のすすめー
宮沢賢治の『春と修羅』は、複数の出版社から発売されている「宮沢賢治詩集」の中にあるようです。
(ただし、すべての出版社の書籍を確認したわけではありませんのでご注意ください)
Kindleを利用している方は、青空文庫で無料で読むことができます。
(私が読んだのは、新潮文庫と青空文庫のKindleです。)
これらの中には、有名な「永訣の朝」も収録されています。
少しだけ旧仮名遣いなので、一見、読みにくそうですが、わからないなりにひらがなを追って読んでいると、不思議と賢治の見た(もしくは頭の中でイメージした)当時の風景がリアルに浮かんできます。
目から入った文字が頭を通って理解につながるのではなく、旧仮名遣いからダイレクトに心に響く感じです。
賢治は雪深い地で生まれ、多くの名作を生み出しました。
これからの年末年始を前に、賢治を読み感じるのにピッタリの季節です。
よかったら読んでみてください。